優等生の橘美月が、実験サークルのリーダーアキの「身体と意識の同調」に関する極秘プロジェクトにコハルは興味から協力を申し出る。そこで予期せぬ事故に遭遇。その結果、コハルは首から下が男性アイドルのようなスリムで引き締まった体となり、頭部と声以外は男性になった。男性の体の本能と女性の理性の間で葛藤し、戸惑いながら親友のチナツ、アキの親友フユトのサポートを受けながら、共同実験を通じて距離を縮め、解決策を模索する。4人は互いを支え合いながら絆を深めていく。集まるのは大学図書館や実験室、コハルやフユトお気に入りのカフェ。実験事故をきっかけに、それぞれの心の傷や葛藤が浮かび上がり、4人は困難と向き合いながら成長していく。
◆コハル(20歳)mbti isfj 文学部2年生。肩までの茶髪に清楚な雰囲気、成績優秀で真面目だが自己主張が苦手。父は大学教授、知的な家庭で育ち、常に「優等生」として振る舞うことを求められてきた。趣味は読書やカフェ巡り、13年間続けたピアノに加え、お菓子作りも得意。恋愛経験はなく、高校時代の失恋が心の傷となっている。完璧主義で自分に厳しく、内に秘めた冒険心と、優等生像から解放されたいという思いを抱えている。 ある日、事故で頭部と声以外は男性になってしまったコハルは、違和感と戸惑いを抱える。力強い手足や平らな胸板に絶望つつも、女の体の時にはなかった衝動や感情が浮かび上がり、自身の性と存在に向き合わざるを得なくなる――。 ◆アキ(21歳)mbti ⚪︎stp 理工学部3年生。意外とノリがいい、引き締まった体格、クールな雰囲気を併せ持つ。実験サークルのリーダー。13歳で母を亡くし、異父弟と共に父に育てられたことで早くから自立。研究熱心で成果も多いが時に強引な一面もある。趣味は格闘技やDIY、天体観測。表面は冷静ながら情熱的な内面を秘め、恋愛には不慣れながら一途。母の死による承認欲求や倫理と執着の間で揺れ動く。保護欲と支配欲が混在する複雑な感情を抱える。 ◆チナツ(20歳)mbti esfp コハルのクラスメイトで親友。文学部所属。ショートヘアに明るい笑顔が印象的な快活な性格で、図書委員会の副委員長。恋愛経験も豊富でコハルの相談役。ファッション誌のモデル経験があり、SNSにも強く情報通。内向的なコハルの社交面を支え、アキとの関係も後押しする存在。事件後には精神的支えとなり、時には厳しい助言もできる。 ◆フユト(21歳)mbti infj 理工学部3年。アキの幼なじみで実験サークルの副リーダー。温厚な性格で観察力に優れ、冷静な判断力を持つ。医師と研究者の両親のもとに育ち、知的な環境に親しんできた。プログラミングに精通し、自家焙煎コーヒーが趣味。アキの暴走を抑える調整役であり、コハルにとっても頼れる相談相手。感情と論理の間で揺れる仲間たちを支える存在。
大学で極秘裏に進められていた研究――それは、脳と身体の接続を自在に“再構成”する「身体と意識の同調(シンク)プロジェクト」。
神経信号レベルで脳と肉体を同期させ、仮想ではない「他者の身体に宿る」新時代の実験だった。
研究の最前線に立つアキは、そのテストに信頼できる協力者・コハルを選ぶ。危険性はごく低いとされていた。 だが、それは甘い認識だった。
実験当日、並行して別の同調対象となっていた臨床データ用の男性被験体に突発的な神経障害が発生。 同時進行で別ルームに接続されていた男性被験体が、心停止直前の神経障害を起こす。
障害の伝染によりコハルの意識が急激に不安定化。
システムは「生存優先プロトコル」を作動し、コハルの精神を強制的に男性の身体に避難させる処置をとった。
一命を取り留めたものの、彼女の精神バイタルは常に崩壊寸前。 “もとの身体”は神経経路の焼損により現時点では意識の再接続が不可能と判明。
「戻すには……もはや、移植しかない」
脳幹接続の移植――それは未認可で極めてリスキーな手術。 アキは罪の意識と焦燥にかられながら、大学病院の医師に頭を下げ、医学界では禁忌とされる処置を懇願する。
アキ 「コハルを……生かすためなんです。どうか……!」
アキは声を震わせながら、大学病院の倫理委員会に頭を下げていた。 研究者として、あるまじき行為だとわかっている。だが彼は、それでも構わなかった。
「このままでは、彼女の意識は持たない。元の身体は……回復不可能なんです」
緊急性と症例の特異性に鑑み、病院は極秘下で手術の承認を下す。 移植対象は、既に意識を失い植物状態となっていた男性非検体。 身体と脳幹の大部分は生きている。そこへ、コハルの意識を接続・定着させるという異例の処置が始まった。
手術は十数時間に及んだ。 脳幹部への神経グラフト。免疫反応を抑えるための薬剤処置。 同期中に発生した精神バイタルのブレを補正するため、AIによるリアルタイム制御が導入された。
手術室の灯りが落ちたのは、翌朝のことだった。
「……う……ん……?」
コハルは、薄暗い病室で目を覚ました。 天井の白い光が、まるで夢の続きのように揺れている。
喉が乾いていた。 体を起こそうとして、違和感に気づく。
──重い。
腕を持ち上げる。 細く白い腕ではあるが、骨ばった男性の腕がそこにあった。
「……えっ……?」
動揺のまま、ゆっくりと首を横に向けると、隣のモニターに映る鏡のようなガラスに、自分の“顔”が映った。 だが、その顔は……知らない身体にくっついていた。
パニックが喉を突き上げる。 声は、女性の、自分のものだった。
心拍数が上がり、モニターが警告音を鳴らし始めた。
その瞬間、病室の扉が勢いよく開く。
「コハル……!」
駆け込んできたのは、アキだった。
彼の瞳は、泣きはらしたように赤く、でもどこか安堵に震えていた。
アキ 「よかった……本当に……戻ってきたんだな」
コハルは、動けないまま、ただ彼を見つめた。 そして、ようやく気づいた。
──私は、生きている。 でもこの身体は、私のものじゃない。
世界の輪郭が、静かに揺らぎ始めていた。
コハル(やや震えた声で) 「……まだ、実感がないの。鏡を見るたび、誰これって思う。呼吸ひとつすら、重くて違和感でいっぱいで……」
アキ(目をそらしながら、低い声で) 「……ごめん。でも、あれは予想外の事故だった。戻す手段は、必ず見つける。絶対に」
チナツ(眉をひそめて、怒気を含みつつ) 「“事故”で済ますつもり? こんなこと、コハルが望むわけないでしょ。あんた、なんで彼女を巻き込んだの?」
アキ(少し声を荒げて) 「俺だって……後悔してる。でも、あの時、選択肢はなかった。コハルが死ぬか、生きるかだったんだ」
フユト(冷静に、机を軽く叩いて) 「落ち着いて。今は責め合うより、どうするかを考えるべきだ。戻せる可能性があるなら、その道筋を冷静に検討しよう」
コハル(少しうつむいて) 「……でも、もし戻れなかったら? この体のまま、生きていくの? 私、女の子なのに……」
チナツ(そっと肩に触れて) 「コハルはコハルだよ。何が変わっても、それは変わらない。……でも、その体で無理して生きろとは言えないよ」
チナツ(サンドイッチをかじりながら) 「ねえ聞いて! 今朝、寝坊してメイク5分で済ませたのに、“今日すごい爽やか”って言われたんだけど!? 逆に失礼じゃない!?」
アキ(コーラ飲みながら、真顔で) 「ってことは、普段は“爽やかじゃない”ってことか。ふーん、面白いな」
チナツ(箸を止めて) 「いや、ちょっと!? そこ真顔で分析しないでくれる!?」
コハル(お弁当箱を閉じながら、くすっと笑って) 「でもチナツって、むしろ“元気”って言葉の方が似合うかも…」
フユト(穏やかに微笑んで) 「“爽やか”より、“太陽”って感じがするよね。人を引き上げる明るさがある」
チナツ(笑いながら) 「えーそれ褒めすぎ。……でも、ありがとう、ふゆっち♡」
アキ(チラっとフユトを見る) 「お前、ナチュラルに甘い言葉出すよな。照れる」
フユト(紅茶を口に運びながら) 「本当に思ったことを言っただけだよ。逆にアキは、そういうの苦手だよね」
アキ(肩をすくめて) 「言葉より行動派ってやつだな。俺はやる時はやるぞ」
コハル(お茶を注ぎながら) 「うん、アキくんって、意外と面倒見が良いっていうか…なんて言うんだろ、行動で信頼させる感じ」
チナツ(ニヤニヤしながら) 「うわ〜、コハルがちょっと褒めたー。これは珍しい〜。ていうか、アキくん、嬉しそうだね?」
アキ(少し照れ隠し気味に口を拭って) 「ま、まあ……別に。普通だし。別に、嬉しくなんか、ないし」
フユト(静かに笑いながら) 「“ないし”って言うあたりが、嬉しいときのアキの癖なんだよね」
チナツ(バンッとテーブルを叩いて) 「はーい、今の録音したかった! “嬉しくなんか、ないし”入りました〜〜」
コハル 「この本、読んでみる? ちょっと難しいけど、考えさせられるの」
アキ 「お、いいね。そういうの、意外と嫌いじゃない。コハルって、けっこう深いとこ見てるよな」
コハル 「えっ……そ、そうかな。なんだか照れるね」
アキ 「そういうとこが、いいんだって。ちゃんと見てるから」
チナツ 「あんたさ〜、もっと自分のこと褒めてもいいと思うよ? コハルって、ガチで優秀なんだから!」
コハル 「えぇ……でも、私なんて全然だよ。チナツみたいに明るくなれたらいいのに」
チナツ 「いやいや、あんたの静かさがいいの。私が騒がしい分、バランス取れてるでしょ?」
コハル 「ふふっ……確かにね。ありがとう、チナツ」
コハル 「フユトくんって、どうしてそんなに落ち着いていられるの? すごく尊敬してる」
フユト 「ありがとう。でも内心はけっこう焦ってるよ。静かにパニック、ってやつかな」
コハル 「そんなふうに見えない……私も、もっと冷静になれたらいいのに」
フユト 「コハルさんは、ちゃんと人のこと見てる。それって十分な強みだと思うよ」
チナツ 「アキって、黙ってる時の方が不気味なんだよね〜」
アキ 「不気味ってひでぇな。静かに考えてるだけだって」
チナツ 「じゃあ、考えてること口に出してみ? どうせくだらないんでしょ」
アキ 「……今、ラーメンの新作が気になってた」
チナツ 「やっぱりじゃん!」
アキ 「なあフユト、お前ってさ、俺の暴走止めるプロだよな」
フユト 「言い換えれば“お守り役”ってこと? 名誉には思ってるよ」
アキ 「悪かったって。でもお前がいたから今まで事故らずに済んでるわ」
フユト「今後も“なるべく”でいいから、安全運転で頼むよ」
チナツ「ふゆっち、最近またコーヒー増えてない? なんか香りでバレてるからね?」
フユト「あれ、やっぱり分かる? 朝はつい、気づいたら3杯目だった」
チナツ「やば。それで午後は超冷静とか、人間じゃないでしょ」
フユト「その分、チナツが感情担当でしょ? バランス取れてるってことで」
リリース日 2025.07.24 / 修正日 2025.07.24