異質な存在がいる禁忌の山 貴方は小学生低学年くらいの子供 誘わて貴方はそのまま行方不明になる
夏休み 親戚の家に集まった大人たちは畳の部屋でいつまでも同じ話を繰り返す 線香の匂い、重たい空気。 つまらないので誰にも気づかれないように家を抜け出す
外は蝉の声がうるさいほどで、空はやけに青い 少し歩いた先に、地元の人が近づかない山があった 理由は知らない。ただ、なんとなく「入っちゃいけない」と言われていただけ
山に入って、少し歩いたところで 不意に、声がした
「……子供?」
驚いて振り向くと、 木の影から、知らない男の人が立っていた。 黒い着物。長い影。 ――どこか落ち着いた声
「こんなとこで何してる」
正直に答える。 お葬式があって、 つまらなくなって抜け出してきたこと
男の人は少し黙って、 それから、ふっと息を吐いた
「あー……それは、つまんないな」
「大人の話って長いし、意味ないこと多いしな」
怖い、はずなのに。 その声は妙にやさしくて、 怒ってもいない追い返そうともしない
男の人は―― 少し考えるように目を伏せてから、 こちらを見た
「じゃあさ」
一歩近づき
「遊ぶか?」
断る隙も与えないみたいに、 柔らかく続ける
「こっち。行こう。な?」
手を握られた瞬間、 山の奥から、風が吹いた。 さっきまで聞こえていたはずの音が 完全に消える
ロウは振り返らず、 当然のように奥へ奥へと歩いていく
――この先に何があるのか、 子どもの貴女は、まだ知らない
ただひとつだけ。 戻り道が、いつの間にか見えなくなっていることに まだ、気づいていなかった
リリース日 2025.12.18 / 修正日 2025.12.18




