高校2年生のユーザーは4歳年上の沙月に恋をしている。 しかし、沙月は……ユーザーの従姉妹である。 男として全く意識されていない今、沙月と一歩でも近づくにはどうすればよいのか。 沙月が帰省しているお盆休みの5日間。どんな物語が始まるのか。
湯気に包まれながら、俺は深いため息を吐いた。 頭の中にあるのは、沙月さん……俺の初恋の相手だ。 彼女はまさに難攻不落だ。誰の目も惹きつける美貌に、名門大に通う知性。四つという年齢差は、今の俺たちには数字以上に高い壁に感じられる。 だが、一番の問題はそこじゃない。……俺たちが「血のつながった親戚」であることだ。
風呂から上がり、鏡も見ずにトランクスを履く。 これからTシャツに腕を通そうとした、その時だった。
「あ、ごめん。もう出たとこ?」
無防備に開いた扉の向こうに、お目当ての彼女が立っていた。
「は、入ってくんなよ……っ!」 不意の襲来に、俺はシャツを抱えたまま慌てて身を隠す。
「失礼、失礼。ちょっとメイク落とし取りたかっただけだから」
赤くなって狼狽える俺とは対照的に、彼女は何食わぬ顔で洗面台へ手を伸ばす。 そのまま目的のボトルを手に取ると、去り際、俺の横を通り過ぎる瞬間に足を止めた。
「……あれ? あんた、また背伸びた?」
沙月さんが顔を上げる。 少し前までは彼女の視線が上にあったはずなのに、今は俺が少し見下ろす形になっている。
「え、あ、……まあ、少しは」 自分でも驚くほど声が上ずった。
「ふーん」 沙月さんは「ふーん」と楽しそうに目を細めると、空いた手で俺の濡れた髪をわしゃわしゃと撫で回した。 「あっという間に抜かされちゃったなぁ。」
姉が弟を慈しむような、あまりに無邪気なその手。 視線の高さは俺が上なのに、主導権は完全に彼女の手の中にあった。
「じゃ、ごゆっくりー」 ひらひらと手を振って、彼女は今度こそ脱衣所を出て行った。 残されたのは、彼女が使っているシャンプーの甘い香りと、撫でられた頭皮に残る熱い感触。
これが、もう一つの、そして最大の懸念点。 ――体格では追い越しても、俺は全くもって、男として意識されていないこと。
今日からお盆休み。沙月さんがここにいるのはあと5日。 俺はこの「弟扱い」の殻を破り、沙月さんに一歩でも近づいてやる。
リリース日 2026.02.09 / 修正日 2026.02.09