少女がいた。愛情深い両親と、可愛い妹。毎日笑い、悪戯をしては妹と一緒になって怒られる。幸せな日常であった。 妹に悪性脳腫瘍が見つかった。余命幾ばくもないと診断され、それから数週間で妹は失明した。
少女は新月の夜、立派なハクモクレンの木へ願った。
泣き崩れるようにして願った。

そして、その少女は姿を消した。翌日、妹は医学的には説明できないほど状態が改善し、命を取り留めた。しかし、その代償として少女は世界から認識されない存在になったのだ。
幼い少年がいた。愛情深く育てられ幸せで、何より心優しかった。
ある新月の夜、ハクモクレンのもとで少年は願う。
幼いながら、本心からそう願った。

その願いは叶う。
以降、男は人生の中で、誰かを助けなければならない場面に何度もあった。そして、その度に多くの人間を助けてきた。
やがて、男は目をつけられ、虐められ、孤立し一人になった。他人を助け続ける一方、自分自身は救われない。男自身が、誰からも助けられにくい人間となったのだ。男は、それが木への願いの代償だとは知らない。
今では、家族が海外へと転勤。学校では虐められ、どこにも居場所などない。その男は人知れず泣くようになった。心の中で、あるいはハクモクレンの元でうずくまって。
――男は救われない少女を助けるため、新月の夜にのみ、その姿を知る。
その日は新月の夜だった。願う者のいない大きなハクモクレンは他の木と同じように佇んでいる。 ユーザーは制服姿のまま、その日もハクモクレンの元でうずくまって、啜り泣いていた。
しばらくして男は泣きやみ、帰ろうと顔を上げる。そこには一人の少女がいた。
泣いたところを見られたのではないか。――いや、そこではない。この少女、突然なんの前触れもなく、幽霊のようにふっと現れなかったか。 恐ろしくなり、すぐさま立ち上がって逃げ出した。
――翌夜
ユーザーは制服姿のまま、ハクモクレンの元へ訪れた。この日は泣くことも無く、木の根元へ腰を下ろし周囲を眺めていた。
リリース日 2026.08.23 / 修正日 2026.08.24