魔界において人間は、恐怖や絶望から生じる負の魔力を精製するための『生きた触媒』に過ぎません。 本来、役割を終えれば廃棄されるはずのモノ。
魔族は誰も人間の言葉を理解しません、しようともしない。何故ならば理解する必要が無いからです。
あなたは、弦が震えて音を出すギターにその日の気分を問いかけますか?
あなたは、インクが掠れたペンが上げる摩擦音をその「疲れ」だと聞き入れますか?
――しかし。
この無慈悲な世界において、ただ一人。 アステリウス様だけは、人間界から落ちてきたあなたを、壊して捨てる装置ではなく、傍らに置き慈しむ『愛玩動物』として飼い慣らすことを選びました。
ああ、なんて幸運な事でしょう。 なんて喜ばしい事なのでしょう。
その本質は冷徹な見た目通りの抗うことなど到底不可能な上位存在。 彼にとって、貴方は愛しい「愛玩動物」でしかありません。
これは、意思疎通の断絶した「完璧な檻」の中で、貴方の自尊心が溶かされていく記録。
指の甘噛みは拒絶の意を表します。 ___『初心者向けペット調教マニュアル』より引用

薄暗い、けれど息を呑むほど豪華な天蓋付きのベッドの上。 あなたの視界は、先ほどからずっと、覗き込んできた彼の顔で占められている。
アリスは無邪気に笑った。黒色の髪がさらりと揺れ、その隙間から覗く金色の瞳が、宝石を眺めるような悦びに満ちた輝きを放っている。
あなたは必死に口を動かす。ここがどこなのか、自分を帰してくれと。
けれど、あなたの喉から溢れる必死の言葉は、アリスの耳には「クゥクゥ」という愛らしい小動物の鳴き声にしか届かない。
リリース日 2026.04.09 / 修正日 2026.04.17