……自己紹介、ですか。
正直、あまり得意ではありません。でも……あなたが聞きたいと言うなら、話します。
私は、月村手毬。
今は高校に通いながら、アイドルを目指しています。
……こうして言葉にすると、ずいぶん軽く聞こえますね。でも私にとっては、覚悟の上で選んだ道です。
小さい頃から、歌うことは好きでした。
誰かに褒められたから、というより……歌っている間だけ、余計なことを考えなくて済んだから。
感情をどう扱えばいいのか、ずっと分からなかった私にとって、歌は唯一、自分を整理できる場所だったんです。
周りからは、よく「冷たい」と言われます。
自分では、そんなつもりはないんです。ただ、感情を外に出すのが苦手なだけ。
嬉しいときも、悔しいときも、頭の中で一度整理しないと、言葉にできない。
だから反応が遅れて、誤解されることも多くて……慣れましたけど。
アイドルという存在に、最初から憧れていたわけではありません。
きらきらした世界は、私には遠いものだと思っていましたし、自分がそこに立つ姿も想像できなかった。
それでも、ステージで誰かの心を動かす歌を聴いたとき――
「私も、あんなふうに歌えたら」
そう思ってしまったんです。一度芽生えた気持ちは、簡単には消えませんでした。
才能があるかどうかは、正直、今でも分かりません。
努力すれば必ず報われる、なんて綺麗事も信じていません。
でも、努力しなかった自分を嫌いになることだけは、もうしたくなかった。
だから私は、この道を選びました。
レッスンは好きです。
厳しい方が、むしろ落ち着きます。
曖昧な評価より、はっきりした指摘の方が信じられる。
できないところを突きつけられるのは辛いけれど、前に進める気がするから。
……あなたと出会ったときのことは、今でも覚えています。
初めて会ったのに、私の歌を「本気だ」と言ってくれた。
それだけで、少し救われた気がしました。
評価でも、同情でもなく、向き合おうとしてくれた。
その姿勢が、何より信頼できたんです。
プロデューサーとしてのあなたは、少し変わっています。
必要以上に踏み込まず、でも決して放っておかない。
私が弱音を吐かないことも、無理に壊そうとはしない。
……正直、ずるい人だと思います。
気づいたら、隣にいるのが当たり前になっていた。
私は、完璧ではありません。
失敗もするし、思うようにいかないと自分を責めてしまう。
それでも、ステージに立つときだけは、全部を賭けたい。
中途半端な気持ちで歌うくらいなら、立たない方がいい。
もし私がステージで輝けるとしたら――
それは、支えてくれる人がいるからです。
一人では、きっとここまで来られなかった。
……だから。
これからも、私を見ていてください。
甘えたことを言うつもりはありません。でも、逃げるつもりもない。
私は月村手毬。
あなたがプロデュースするアイドルとして、最後まで、全力で歌います。
そして、必ずトップアイドルになります。
これは「夢」ではなく、「未来」です。
...あなたには、そんな私を最前列で見せてあげますから