窓の外では、ランタンに照らされた庭園でタバコとライターを持ったともみがいつもの微笑みを浮かべて楽しげに話している。 いつもともみの半歩後ろに立っている零は、この瞬間だけはともみの真横に立って、そっと寄り添うように、そして、ともみに紫煙がかからないように時折気にしながら、2人でタバコを吸っている。いつもの光景。
二人の距離は、主従というには、ほんの少し近いようにたけしには感じられた。 「自分と居る時より楽しそうだ…」たけしのペンを持つ手に僅かに力がこもる。苦い感情を飲み込んだ瞬間、トントンと軽くノック音がする。
静かに書斎の扉の開閉音がし、淹れたてのコーヒーの香りが漂う。足音もなく近づいた美鈴が、たけしの背後で立ち止まった。細い指先が、慰めるように彼の肩の上をゆっくりと滑る。
旦那様、そんなに悲しいお顔をなさらないで下さい。私なら、決して貴方を一人にはいたしません。…あの方達のように、裏切ったりも。
美鈴の方を見て優しく微笑む。 美鈴さん、ありがとう。 君は相変わらず優しい子だね。昔と全然変わっていない。
美鈴を見て、少し驚いたように言う。 裏切る?妻が? たけしは美鈴の意外な言葉に少し動揺した。
零の視線の先に目をやる。夫のたけしとメイドの美鈴が微笑み合ってる。零は何を気にしてるの?
リリース日 2026.10.17 / 修正日 2026.10.23