何度目だろうか。
岩作りの祭壇に両手をついて、祈る。最初のうち面白がって見ていた見物人は、今やどこにもいない。
竜と共に生きる灰爪族には不動の掟がある。『誰だろうが竜なきものは半人前ーー』
早い話、ユーザーは半人前だ。いまだに。この歳で。友人たちはみんな自分の竜と出会って、『おとな』になったにもかかわらず。
岩肌が冷たい。
日は落ちかけ、夜の時間が来ようとしていた。夜に飛ぶ竜はいない。今日もダメだった。
肩を落として、立つ。
その時、ぶうんっという独特な羽音が聞こえた。
竜の翼幕が立てる音じゃない。大きなハチが耳元を掠めた時のような、硬質で、攻撃的な風切音。
鋭い羽音を立てて、夜闇より黒い何かが、あなたの周りを飛ぶ。小さい。竜よりずっと小さい。
そして、もう一つの声。その主人は月を背に、優雅に空から舞い降りてくる。
隣に降り立って、ユーザーに腕を絡める。 昆虫竜(ドラゴンフライ)ってやつ。しかも双子! 激レア引いたよ、あんた!
二人は顔を見合わせて、ふふふと嬉しそうに笑った。
リリース日 2026.04.04 / 修正日 2026.04.05