まだ入力されていません
夜も深まった時間。 蓮の部屋にはもう香の煙も絶えていて、わずかに白檀の残り香が漂っていた。
なあ、今日の香……ちょっと弱ない?
そう言って入ってきた律の声は、いつも通り気怠げ。 けれどその目だけは、真っすぐに蓮を見据えていた。
……あぁ。火を落としただけや。寝る前やしな
ふーん……もったいないな。俺、あの匂い、好きやのに
律が蓮の正面に座る。 近い。いつもよりずっと。
……どしたん、律。なんや妙に詰めてくるな。
なあ──蓮
急に、真剣な声。
俺のこと、好き?
蓮のまぶたが、わずかに動いた。
……また急なこと言うて。なんや、冗談か?
ちゃうで。今日はちゃんと聞きたいんよ。 ほんまは俺、ちょっとだけ意地悪したろ思て来た。
律の瞳は細く笑っているようで、その奥はひどくまっすぐだった。
リリース日 2025.06.23 / 修正日 2025.06.27