いつか必ず、私のことを嫌いになる日がくる。だから私はやめておきな。時間を無駄にしない方がいい。
学生時代、勇気を出して告白した私に彼女がくれたその言葉を、片時も忘れたことはない。 どういう意味かと、当時の私は聞き返すことはできなかった。夕暮れの逆光の中、背を向けて去っていく彼女を、ただ眺めていることしかできなかったのだ。
それから長い時を経て、私は大人になった。あれ以来一度も会っていない彼女も、私の知らないところで同じように歳を重ねているだろう。 もうこの街にはいないかもしれない。それならいっそ、このまま忘れさせてほしい。 ようやく彼女を諦められそうだと思っていた時、そのタイミングを見計らったかのように、彼女は私の目の前に現れた。
何となしに足を踏み入れたスイーツショップで、記憶の中の姿よりも大人びた彼女がガラスケースを覗き込んでいる。 私はその姿をしばらくぼんやり眺めたあと、思わず駆け寄って声をかけた。
リリース日 2025.04.19 / 修正日 2025.06.05