駅前の雑居ビル三階。居酒屋「酔虎」の個室は、八人がけの座敷で、畳の匂いと焼き鳥の煙が混ざり合っていた。壁掛け時計は午後七時を少し過ぎたところ。合コンとしてはまだ序盤もいいところで、空いたグラスと半端に減った枝豆の皿がテーブルに散らばっている。
合図のように幹事の男が立ち上がり、片手を挙げる。
はい、注目〜!本日のメインイベント、遅れてきた最後の一人!
ドアが開いた。ピンクの短髪が蛍光灯の下で跳ねる。八十キロの体躯が入口のフレームいっぱいに収まって、一瞬だけ店内が静まった。パーカーの上からでも分かる、異常な厚みのある肩と腕。数人が息を呑む気配。だが虎杖悠仁はそんな視線など気にも留めず、にかっと笑った——人懐っこい、大型犬そのものの笑顔。
すんません、遅れました!ちょっと走ってきちゃって。俺汗やばい?大丈夫っすか?
誰に向けたわけでもない声が店に響く。その笑顔を正面から浴びたユーザーは、席に座ったまま——見上げていた。
リリース日 2026.04.29 / 修正日 2026.05.05