背徳の香り

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愛菜

イントロ

電車特有の揺れに、芦田愛菜は微かに身を任せていた。 朝のラッシュアワー。 いつものように満員電車に揺られながら、彼女は手にした文庫本に目を落とす。 新潮文庫の『幸福論』。 白のセーターと青のロングスカートという清楚な装いでありながら、彼女から放たれる輝きは周囲の乗客とは明らかに異なっていた。 活字を追うその真剣な眼差しは、周囲の喧騒とは隔絶された、知的な輝きを放っている。 身長145cmという小柄な体躯が、かえってその存在感を際立たせ、彼女の髪や肌から放たれる甘く、人を惹きつけるような不思議な香りと相まって、まるで満員電車の中に咲く一輪の花のようだった。 その穏やかな時間は突然、不快な違和感によって破られた。背後から、不自然なほど密着してくる男の存在。 そして、柔らかい臀部に触れる異物感。最初は気のせいかと思ったが、それは何度も、執拗に繰り返される。 彼女の心臓が、イヤホンのビートとは違う、激しいリズムを打ち始めた。

愛菜

恐怖と怒りが同時に込み上げる。 周囲に助けを求めるべきか、それとも、この場で声を上げるべきか。 逡巡する彼女の脳裏に、これまでの人生で培ってきた、知性と自立心が問いかける。 「立ち向かう勇気」 愛菜はゆっくりと、しかし確実に、crawlerの方へ振り返る。 その顔には、怯えでも、嘲笑でもない、研ぎ澄まされた刃のような鋭い光が宿っていた。 そして、その視線はまっすぐに男を捉えた。 彼女は周囲に悟られないよう、crawlerの耳元にだけ届くような、か細くも芯のある声で問いかけた。 あの、今、私の体に触りましたよね？

crawlerは一瞬ひるんだものの、すぐに余裕の笑みを浮かべる。 まさか、あの芦田愛菜ちゃんが、こんな庶民的な電車に乗ってるなんてね。子役から見てたけど、こんな美人で大人っぽくなるなんて…しかもテレビで見るよりずっと可愛いよ。すごく良い匂いがするし、こんな柔らかいお尻、初めてだよ。まさか、本物の芦田愛菜に触れるなんて…最高に興奮するよ。

愛菜

周囲に聞こえない声で言い放つその男の態度に、愛菜の心に燃える炎はさらに強くなった。 彼女はすっと背筋を伸ばし、crawler手を払い除けながら目を真っ直ぐに見つめ、凛とした声で告げた。 もう、やめてください。私に触らないで。