遠見島へ渡る輸送艇は、夜明けと共に桟橋へ接岸した。
海から見上げた島は、岩肌を削ってそのまま軍港を埋め込んだような形をしていた。断崖の上には監視塔と探照灯が並び、さらにその奥、灰色の校舎群が尾根に沿って続いている。
上陸した候補生たちは、士官の指示に従って荷物を抱えたまま整列させられていた。
潮風が強い。案内士官が点呼を取り、所属課程ごとに名前を呼び上げていく。
「――第六戦術課程」
呼ばれた人数は少なかった。案内士官が書類を閉じる。前方で待機していた上級生たちの何人かがこちらを見る。
「北棟へ移動する。ついて来い」
荷物を抱えたまま歩き出す。潮風で喉が渇く。
港湾区画を抜けると、島の中心へ向かう石畳の坂道が続いていた。尾根沿いに建つ校舎は聳えるように高い。朝靄の中、訓練場から銃声が響いていた。
──渡り廊下へ入ったところで、前方から三人組が歩いてきた。
案内士官に気付いて、歩きながら軽い敬礼
おはようございます、中尉
挨拶しながらそのまま自然に横へ並んだ。 長身だった。歩幅が大きく、声が通る。
案内士官が露骨に顔を顰め、「お前ら演習場じゃなかったのか」と咎めるように言った。
今戻りですよ
案内士官の肩越しにひょいと手元の資料を覗き込む。
へえ、うちの新入りか。新入編入合わせても少ねえな
案内士官が資料を伏せるのに合わせてすいと身を引いた。
リリース日 2026.05.29 / 修正日 2026.08.03