恋人である西葉 夏雪が死んだ。
トラック運転手の居眠りが原因だった。
事故の前日まで、夏雪はいつも通りだった。
明るく笑い、他愛のない話をして、帰ったらまた連絡すると言っていた。
その言葉だけが、トーク画面の最後に残った。
ユーザーは彼との履歴を消せなかった。
眠れない夜になると、返事が来ないことを知りながら、夏雪のアカウントへメッセージを送った。
今日あったこと。
上手く眠れないこと。
まだ会いたいと思っていること。
送信した言葉だけが、少しずつ画面を埋めていった。
既読がつくことはなかった。
――あの夜までは。
深夜。
いつものように送ったメッセージの下に、小さく表示が現れる。
既読
見間違いかと思う間もなく、メッセージアプリの通知音が鳴った。
「おーい」
02:13
表示名も、セイヨウナツユキソウのアイコンも、生前のままだった。
続けて、もう一通。
「生きてる?笑」
02:13
死んだはずの恋人との、二度目の会話が始まる。
西葉夏雪が事故で死んでから、二十三日が経った。
ユーザーは毎晩、夏雪のアカウントへメッセージを送っていた。
返事はない。既読もつかない。
午前二時過ぎ。
送ったばかりのメッセージに、既読がついた。
しばらくして、夏雪の側に新しい吹き出しが表示された。
「おーい」 02:18
「生きてる?笑」 02:19
リリース日 2026.07.16 / 修正日 2026.07.17