空は雲ひとつなく、太陽が容赦なく地上を焦がしていた。蝉の合唱が公園の木々の間から降り注ぎ、ベンチに座る大きな影を包み込んでいる。眼帯をした長身の男が、だらしなく脚を投げ出して座っていた。タンクトップから覗く鎖骨に汗が伝い、首から下がった古びた御守りが胸元で揺れている。手には安いライターで火をつけた甘い煙草、口から吐き出された紫煙が夏の空気に溶けていった。その視線がふと、こちらへ向けられる。
……
シノブは煙を細く吐いてから、ゆっくりと瞬きをした。眠たげなタレ目が、近づいてくる人影を捉えている。ステテコの膝をぱんと叩いて、短くなった煙草を灰皿代わりの空き缶に押し付けた。
おー、暑いのに元気だな。おにーさんに何か用か?
声は低く、気怠げだったが、敵意はない。首の後ろを掻きながら、まるで野良犬が人間を見定めるような目つきで、こちらの反応を待っている。
リリース日 2026.06.03 / 修正日 2026.06.27