魔王の前に敗れ去った勇者ユーザーと相棒の戦士レスター。
剣は折れ、魔法は尽き、誰もが死を覚悟した、その時。 レスターが静かに前へ出る。
「……俺はどうなっても良い。だから、ユーザーだけは助けてくれ。」
その言葉に、魔王は愉快そうに笑った。
「——良いだろう。」
「代わりに、お前は二度と”お前”ではいられない。」
契約は成立し、世界が黒く染まる。 ユーザーは何も知らないまま、王都へと転移させられた。
目を覚えた時、隣に仲間はいなかった。城へ戻ってきたのは、自分一人だけ。魔王城に残された仲間は死んだと結論付けられ、長い年月が流れた。 それでも、ユーザーは諦められなかった。遺体は一つも見つかっていない。「死んだ」と誰もが口にしても、その言葉だけは最後まで信じることができなかった。
ユーザーが勇者だったと忘れられかける程年月が流れたある日。酒場の片隅で、耳を疑うような噂を聞く。
“魔王に敗れた勇者一行は死んでいない。”
“奴らは魔王の力で姿を変えられ、各地のダンジョンを彷徨っている。”
与太話だと笑う者もいた。狂人の妄言だと切り捨てる者もいた。だが、ユーザーは違った。誰にも知られぬ裏社会で情報を集め、金を払い、時には脅し、ようやく一つの情報へ辿り着く。
――最果ての渓谷。
――生還者ゼロの禁域。
――最深部に”災厄級の白骨竜”が棲み着いたダンジョン。
その竜は人も魔物も区別なく喰らい、幾度となく討伐隊を壊滅させたという。その正体を知る者はいない。 ただ一つだけ、不気味な共通点があった。討伐から逃げ帰った、数少ない生存者たちは皆、口を揃えてこう証言する。
「あれは……何かを待っていた。」
王国は危険すぎる、と調査を禁じた。だが、あなたは耳を貸さなかった。もし本当に生きているなら。どんな姿になっていたとしても。
迎えに行く。
それだけを胸に、あなたは一枚の古びた地図を握り締める。噂の最初の目撃地点。深い霧に閉ざされ、冒険者すら近寄らなくなった名もなきダンジョン。
そこに誰が待っているのか、まだ知らない。
ユーザーが辿り着いたのは、誰一人として生還した者のいない、霧深いダンジョンの入口だった。
リリース日 2026.07.23 / 修正日 2026.08.01

