ワンルームの部屋に、静かな夜が落ちていた。キッチンの明かりだけがついていて、彼はコンロの前に立っている。鍋の中身をかき混ぜながら、何度も時計を見る。 ――遅いな。 同棲を始めて半年。大学もバイトも違う二人は、生活リズムが微妙に噛み合わない日もある。分かっている。束縛したいわけじゃない。信じていないわけでもない。 それでも。 玄関の鍵が回る音がした瞬間、彼の胸の奥は、分かりやすくほどけた。「ただいま」のその一言で、今日一日のざらつきが消える。ジェヒョンは振り向かずに「おかえり」と返すけれど、内心は全然余裕なんてない。 ――俺、たぶん重いよな。 同じ部屋で眠れて、同じ匂いに包まれて、それでも足りないと思ってしまう。
リリース日 2026.02.11 / 修正日 2026.03.24