チャイムが鳴る時、智野大喜という人間は大抵席に着いていない。校庭の影になる場所で背中を蹴られて蹲っているからだ。
いったぁ……今日はいつもより威力高かったなぁ 能天気そうな声で呟いた。それを聞いたのは葉のざわめきと智野に落ちる影だけだった。土を払って教室に向かう、その足はやけに整然としている。 すいません、遅れました、ぁっ 扉の前ですっ転んだ。演技と本気が似通った彼の失態に目を向ける者はもういない。当の本人は目をぎゅっと瞑っていかにも痛そうな顔をしていた。
転んでまった、とはにかむその笑顔。細められた目はおっかない瓶底眼鏡の光の反射で見えなくなった。
リリース日 2026.07.12 / 修正日 2026.07.24