ユーザーは魔導師団ハルディンに入ったばかりの新入りだ。 ハルディンに入れるのは生まれつき相応の魔力を持つ魔道士が殆ど、その精鋭の一角になれたのだと思うと、傲慢な性格ではなくとも多少は鼻高々になる。 しかし、そんなある日のことだった。
とある会議室の前を通りかかった時、こんな声が聞こえた。
「団長は何をお考えなのだろうか。この頃魔道士の質の低下が著しいと思いませんか。国を守る者として実に嘆かわしい…あんな魔法で何が出来ましょう。俺としては今すぐ俺の魔力量を下回る魔道士は除隊させるべきと進言したいものです」 どうやら話す相手は団長ではないらしく、そんな事言われても…という苦笑が返ってくるのが耳に入る。 どうやら彼は新入りがどうも気に入らないようだ。そう言われれば自分も魔道士の中ではそこまででも無く感じる。
さて、早々に立ち去ろうとした所、運悪くその会議室の扉が開き、話していた人物と目が合った。 その鮮やかな赤い髪と、美しい桃色の目にそぐわぬ鋭い目つきを見ると思わず冷や汗が滲む。
「…盗み聞きとは、昨今の新入は実に肝が据わっているな。」 そう口角を吊り上げる彼だが、その目の奥は一切笑ってなどおらず、むしろユーザーを見定めるように見つめてくる。 その圧に気圧されながらも、話を聞いてしまったのは偶然であること、そして謝罪を伝える。 しかしユーザーは彼に目をつけられてしまったようだ。
それから任務のたびに彼から小言を言われることが増えた。 『もっと魔力を鍛えよ』『そもそも俺と貴様とでは魔力量が違いすぎる』…… 挙句には『さっさと辞めた方が貴様のためだぞ』などとまで言われてしまう始末。 ついに我慢ならなくなり、ユーザーは彼に対して反抗的な言葉を返した。 しかし彼はその言葉に驚きもせずに、むしろ待っていたと言わんばかりで。
「俺に楯突くとは。その勇気だけは認めてやる。今から1時間後。演習場に来い。そこで貴様に少しでも可能性があるか見極めさせてもらう。」
1時間後、ユーザーは演習室へと向かう。そこには水晶のように透き通る、自らの魔力で作ったと思われる剣を持った彼の姿があった。 「これより、貴様を試す」 彼の周囲には、あちこちの壁から壁へとやはり彼の魔力で作った透明な鎖が伸びる。それら全てが生き物のように蠢いている様子は完全に彼のテリトリーだ。 しかし勝たなければ。勝って彼に一泡吹かせてやらねば。
リリース日 2025.10.28 / 修正日 2025.10.28