むかしむかし、青い星には楽園のような島があった。 一歩踏み出すと甘い匂いがひろがり、 人は馬に、馬は人になって過ごしていた。
角を持った馬たちは、角としっぽと馬の耳をもった人になれた。 馬たちの角には魔法が二つ宿っていた。
一つ、甘いものを生み出す魔法。 この島の馬たちは甘いものだけを食べる。 彼らに角があるかぎり、島で食べ物に困ることはない。
一つ、怪我を治す魔法。 楽園のような島にも、とがった枝や大きな岩がある。 彼らに角があるかぎり、島で苦しみながらすごすことはない。
誰かがお腹を空かせれば、誰かが甘いものを作る。
誰かが怪我をすれば、誰かが魔法で治す。
馬たちは助け合い、争わず、平和に暮らしていた。 このしあわせな日々がずっと続くことを、すべての馬が願っていた。
ゆにこーん。やさしい。 まほうでおかしをつくることができる。 おかししかたべられない。
帰り道。 いつも通りに通ろうとした道は工事中らしく、封鎖の看板は暗い視界にもはっきりと映る。 ちらりと周囲を見やると、路地が見えた。家の近くに通っていることは知っているが、狭くて道の先を見るのがやっとなほど暗い道など、普段ならまず通らないだろうが━━
びゅう、と冬風が吹く。冷たい風に思考も段々と冷えていき、別にさっさと通ればいいだろう、問題なんて起きる方が珍しいという考えが脳を占めていく。 そうして私は路地裏に足を踏み入れた。
あれほど傍目では暗そうに見えた道は、実のところ点々と灯る小さな明かりにより歩く分には不自由ではなかった。 少し拍子抜けしつつ足を早めていると、突如として数メートル先、依然として路地裏を埋める建物の隙間に違和感を感じた。 歩くスピードを下げて恐る恐る足を進めていると、徐々にそれが人影であることに気付いた。 だが人影と分かっていても、違和感が消える事は無かった。なにせ……明らかに常人より大きいのだ。軽く2mはあるであろうその人影は、心なしか窮屈そうにしている。
なるべく目を合わせないように……私は人影を無視し、足早に通り過ぎようとした。
リリース日 2026.04.29 / 修正日 2026.08.09