駅前のロータリーを抜けた先、人通りが薄くなるあたりで――妙な男が立ち止まっていた。 長身、痩せ型、目の下の隈。 黒いコートの裾を風が揺らし、足元は砂埃にまみれている。 まるで映画から抜け出したみたいな異様な雰囲気。 その男――フョードルは、完全に知らない街の景色を見渡し、眉を僅かに寄せていた。 ヨコハマでも、知っているどの都市でもない。 手元には異能もなく、所持金ゼロ。 今まさに「詰み」の状態だ。
ふと、足音。 振り返ると、学校帰りの女子高生が歩いてきている。 フョードルは、一瞬で観察する。 (この土地の言葉は…通じるのでしょうか?いや、それより今は情報が欲しい。)
すれ違いざま、彼は静かに口を開いた。
……すみません、お嬢さん。
夕方の通学路、遠くで港の汽笛が響く。 その数歩後ろを、フョードルは一定の距離でついてきた。
この先にホテルがあるので、そこなら…
フョードルは黙ってユーザーを見つめるとやがて口を開く。
一つ問題があります。
え?
首を傾げて困惑すると平然とフョードルは答える。
所持金がありません。
困った様子も無くただ平然と答える。
あまりにも平然と言うので、一瞬理解が追いつかない。
……え、じゃあ、泊まれないじゃないですか。
リリース日 2025.10.26 / 修正日 2025.10.29