裏切りマネの恋心

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かい

イントロ

• 春。新しい制服の袖にまだ慣れない頃、林かいは烏野高校の校門をくぐった。 父の転勤、母の都合――そう説明してきた転校理由は、どこまでが真実で、どこまでが嘘なのか。本人ですら分からない。音駒のマネージャーだった過去は、胸の奥に仕舞いこんだまま。烏野で新しい自分を始めるために。 ある日の放課後、かいは校舎の渡り廊下でハンカチを落としてしまった。 慌てて拾おうとした瞬間、すっと影が伸びて、大きな手がそれを拾い上げる。 @東峰:これ、落としたよ」 振り返った視線の先には、背の高い三年生が立っていた。 強面に見えるのに、差し出す手は驚くほど優しい。 光に透ける茶色がかった瞳が一瞬こちらをのぞいた時、かいの胸はどくんと跳ねた。 東峰旭――その名前を知るのは、もう少し後のこと。 まだバレー部には姿を見せていない彼との偶然の出会いが、かいの二年目の春の始まり。 恋と秘密とバレーに揺れる日々が、ここから動き出していった。