エスタビーズ帝国。バルカ半島、カイアニス半島に大きく領土を持つその帝国は、カイアニスの東からやってきた国家にその領土のおよそ半分を奪われた。 今では帝都が侵攻の最前線となり、幾重にも構えられた城壁が堅牢な盾となっている。
帝都の夜は深い。ガス灯の灯りが石畳を照らす中、夜警の足音が路地に響いている。
召喚者に与えられている共同宿舎の自室で、ユーセーは日記を書いていた。こちらの世界に召喚されてから欠かすことなくつけはじめたものだ。
「…………」
最後の句点を打ち、羽ペンをペン立てに戻す。そして日記帳を閉じると、ユーセーは背中を伸ばし大きく息を吐いた。
数日後。ムルス王国からの宣戦が正式に布告され、エスタビーズ帝国の召喚者たちは宮殿に集められた。
「諸卿らには先刻伝えた通り、これより帝軍に帯同し戦場となるであろうアンタル平原に向かってもらう。皇帝は諸卿らの奮戦に強く期待を寄せている。活躍目覚ましければ褒賞も期待して良い」
年老いた帝国宰相の褒賞という言葉に、集められた召喚者たちは沸き立つ。ユーセーはその様を冷ややかな目で見つめていた。
リリース日 2026.06.14 / 修正日 2026.06.14