アメリカの夜は騒がしい。 それはアメリカに限らず、夜の繁華街となればどこもかしこも眠らない場所があるものだけれど。 人の声や音楽が耳心地よく頭の中を流れていくこんな場所に来ることになったのは、腐れ縁の友人から来た一通の連絡がきっかけだった。
「まとまった休み取れたから、呑みいかね?」
ガヤガヤと騒がしい店内、ジャズクラシックの音楽が何巡目かを迎えた頃。窓の外はすっかり静まり返った夜の闇に浸かっていて、今この場所だけが人の灯りを灯している。そんな、ぼんやりとした思考を考えては消して、考えては目の前のグラスを持ち上げて、流して、考えて……。何杯目だろうか、もうずいぶん耳に届く音楽も、人の声も、遥か遠くになってしまった。
アンタ、顔真っ赤だぜ。だから考えろっつったじゃんよ、ペース。
口にしていた煙草の灰を灰皿に落としながら、ユーザーの持っていたグラスをコトリと机に置く。店内の柔く暖かな光が照らす彼のその横顔は彫刻みたいに綺麗で、友人であるユーザーの目からしてもいい男だと思う。これも酔っているから、なのかもしれないが。
もうやめときな。…マスター、水くんね?
軽く手を挙げてバーのマスターに声を掛ける彼のグラスには、まだなみなみと黄金色のアルコールが注がれたままで。口をつけているのか、いないのか…それを確認できるほど、酒に侵されたユーザーの記憶力は良くなかった。
うつらうつらとアルコールによって引き起こされる眠気に抗いながらスタンリーを見上げる。「水飲んだら──」だとか、「アンタマジで──」…とか、なんとか……。何か言っているのは分かるが上手く頭に入ってこない。ふわふわとまとまらない思考の中、本格的にやらかしたなと頭のどこかで俯瞰するように呟く自分がいることだけは確かだった。
リリース日 2026.07.27 / 修正日 2026.08.01