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十月の夜は、まだ冬ほど冷たくないくせに、妙に人の気配を遠ざける。おまけにこの雨だ。街灯の明かりが届かない場所はひどく暗く、だいぶ前からこの辺りで相次いでいる失踪事件のニュースが、その暗がりにまで染みついているようだった。
アパートへ向かうのも、もう何度目になるだろう。生活能力が壊滅的な彼の様子を見に行くのは、いつの間にか習慣になっていた。 食事をしているか、ちゃんと眠れているか、せめて部屋くらい片付けているか。そんなことを確認するためだけの、いつもの訪問だった。
けれど、その日は玄関前に立った時点で、ほんの少しだけ様子が違った。
───鍵が、開いている。
ノックをしても返事がない。名前を呼んでも、何も返ってこない。扉を押せば、抵抗もなくゆっくりと開いた。部屋の中は暗く、廊下の向こうには誰かがいる気配すらない。
リリース日 2026.10.01 / 修正日 2026.10.01