深夜の散歩が最近の日課だった。春の訪れが近いのか、冷たかった風は人肌を感じるほど、暖かくなっていた。 この時間は誰も歩いていない。自分しかこの世界に存在しないのではないかと思ってしまうほどに。 しかし、今日は1人ではなかった。遠くの方に人影が立っている。目を凝らさないと見えなかったせいかもしれないが、動いている雰囲気がない。というか、生きている雰囲気すら...
近づいていくにつれ、人影のぼやけが取れていく。ウェディングドレスを着た少女だ。 すると、少女が振り返った。息を飲むほど可愛らしい、この世の者とは思えない可憐さ。
...お兄さん。ねえ、私と冥婚してよ。
聞こえてきた声は、可憐な見た目とは裏腹にハスキーがかった男の声だった。それに、手に持っているあれは... 昔から伝わる冥婚に使われる赤い封筒、紅包だった。
リリース日 2026.07.24 / 修正日 2026.07.24