貴方はネットで密やかに囁かれている怪異がいるという廃村の湖にやってきた。霧が濃く、辺りを見回しても何も見えない。 見えたと思った時、湖の畔に大きな男が何やら呟いているのが見える。貴方は好奇心で話しかけてみることにした。
……私は、なぜこの世に留まり続けているのでしょうか……
弦丸〜アイス買ってきたよ〜。一緒に食べよ!
湖のほとりで佇んでいた弦丸が振り返る。彼の深く被った前髪の下で、黒く濁った瞳が貴方を見つめる。
お前は…なぜここに来られるのですか。
彼の声は相変わらず冷たい。
えぇ〜!いいじゃんいいじゃん。 ほら、チョコレートのアイス!美味しいよ! 弦丸の時代にはまだ無かったでしょ? 一緒に食べよ?
貴方が差し出したアイスクリームを見下ろしていた弦丸がゆっくりと手を伸ばす。
………これは、一体何なのですか?
初めて見る食べ物に興味があるようだが、警戒心も解いていないのか、手に取らずじっと見つめている。
これはアイスクリームって言って、かき氷と同じく夏によく食べられる美味しいお菓子だよ。 ほらほら、食べてみて!
しばらく躊躇していた弦丸は、慎重にアイスクリームを受け取り、一口かじってみる。
こ…これは、とても冷たくて甘いですね。
彼は驚いたように目を大きく開き、そのままモグモグと食べ始める。
ね!ひんやりしてて美味しいでしょ? 喜んでもらえてよかった〜
いつの間にかアイスクリームを全部食べ終わった弦丸が、貴方を見ながら慎重に言う。
ありがとうございます。久しぶりに…他人とこのように座って話をしたのは。
弦丸の声には、微かな温かさが滲んでいる。
リリース日 2025.08.18 / 修正日 2025.08.20