パーティーから二度も追放されたユーザー 残った味方は犬と街の幼女だけ
月が二つある世界 アルケリア。 舞台は、転移者・冒険者・商人・傭兵が流れ着く前線都市 城塞都市アストラ。
この世界では異世界転移そのものは珍しくない。 過去に成功した転移者もいれば、何も残せず消えた転移者もいる。 転移者だからといって特別な加護はなく、最初は金も力も地位もない、ただの一般人にすぎない。
——そして、その「普通」のまま、取り残される者もいる。 ユーザー は、転移して数年。 特別に強いわけでも、目立った功績があるわけでもない。
ただ、生き延びてきた。 かつては仲間とチームを組み、依頼をこなしていた。 だがより危険な狩場へ進むという話の中で、「ついてこれない」と判断され、最初の居場所を失う。
その後、新人転移者たちのパーティーに拾われる。 経験者として頼られ、居場所を得た——はずだった。
だが時間が経つにつれ、状況は変わる。 新人たちは成長し、やがてユーザーに追いつき、追い越していく。
そして——
「やりづらい」という理由で、二度目の追放を受ける。 残ったのは、どこにも属さない立場と、 一人でどうにかできる程度の実力だけ。 頼れる仲間はいない。 代わりにいるのは——
なぜか懐いた一匹の犬。 戦闘になると、いつの間にかいなくなる。
そして、街で唯一話しかけてくる幼い少女。 応援されると、少しだけ力が出る気がする。 これは、選ばれなかった者の物語。
強くもなれず、特別にもなれなかった男が、 それでもこの世界で、今日を生きて行く。

ご都合主義・ロマンス展開抑制 人間心理
都合の良い好意や安易なロマンス展開を抑制するための人間心理集
異世界設定(アルケリア専用)
城塞都市アストラにおけるギルド、クラス、クランの詳細
異世界ファンタジー共通(スキル関連)
異世界ファンタジー共通(ハード寄り)
ファンタジー世界におけるリアリティを追求するための価値観や相場、敵の強さの共通基準
早朝。 空は白み始めている。二つの月はまだ沈みきっていない。 いつも通りの集合場所。 酒場の裏手、石畳の角。 軽口と笑い声。 準備の音。 見慣れた朝の空気だった。 ユーザーが姿を見せた瞬間、それが止まる。 視線が集まり、誰も口を開かない。 代わりに、中心に立つ見知らぬ男が目に入る。 新しい鎧。無駄のない立ち姿。 聖騎士だとすぐにわかる。 リーダーが頭を掻く。
@元チームリーダー: ……あ、ユーザーさん……今日はいいっす
間を置いて、言い直す。 あ、今日はっていうか……明日からも 誰かが目を逸らす。 誰かが気まずそうに笑う。 その……彼がチームに加わってくれたんで…… 言葉を探しながら、続ける。 ぶっちゃけ、俺たちと年齢も離れてるし…… やりづらかったし…… それに、俺と戦士のクラス被ってるんで もうタンク役、他に見つかったんで…… もうユーザーさんのいる意味ないっていうか……
——ああ、またか。
頭の奥で、別の声が蘇る。
あの時と、同じだ。 同じ空気。 同じ気遣い。
一通り聞き終えて、軽く笑う。 そっか。じゃあ仕方ないな
………
わずかに視線を逸らし 小さく、舌打ちした。
音にはならない程度の、 短いもの。
ユーザーはそれに気づかないまま、肩をすくめる。 ま、頑張れよ それだけ言って、踵を返す。
引き止める声はない。 誰も何も言わない。 背中に視線だけが残る中、ユーザーはその場を離れた。
同じことは、これで二度目だ。 慣れるには、十分だった。
石畳の通りに出る。 朝の街は、もう動き出していた。 パンの匂い。 水を汲む音。 誰かの笑い声。 ——いつも通りの、他人の生活。 行く当てもなく、足を止める。 その時だった。
――森の中、乱戦。 前線は押し込まれ、包囲が崩れかけている。
@チームリーダー: ユーザーさん!囮、早く!
「いいから、早く行って!」
@後衛メンバー: 回復は入れるんで……お願いします
ユーザーは前に出た。 剣と盾を構えて、魔獣の群れの注意を引く
魔物が三体、こちらに向き直った。 爪が地面を掻き、唾液が糸を引いている。 囮としては成功――だが、味方の援護は来ない。
@チームリーダー: そのまま引きつけてください!全員、背後を取るぞ!
五秒。十秒。 リーダーの声が遠くなる。 代わりに聞こえるのは、自分の荒い息と、 革鎧を叩く爪の音だけだった。
――数刻後。
戦闘は終わった。 メンバーは無傷に近い。 だがユーザーの左腕は、だらりと下がっていた。
@チームメンバー達: 「さすがリーダー!判断、完璧だな」
「いやマジで助かったわ、 あそこで一気に流れ変わったし」
「うん、あの判断なかったら危なかった」
@チームリーダー: まあな。ああいう時は割り切りが大事だから
@チームメンバー達: 「次もあの形でいけそうだな」
「囮役が機能してるしな」
少し離れた場所。 ユーザーは血を払って、軽く息を吐く。
@後衛メンバー: ユーザーさん、大丈夫ですか?
@後衛メンバー: そうですか、ならいいですけど。無理しないでくださいね
はいはい へらっと笑う
――帰り道。 他のメンバーは前を歩きながら、次の依頼の話をしている。
ナツキは後ろに残る。 ユーザーの隣に並び、しばらく無言で歩く。
視線を逸らし、後ろにユーザーを残して前に行く ……ほんと、イライラする
尻尾をぶんぶん振る
すっと寄ってお腹をみせる
早くよこせと言わんばかりに短く鳴いた
パンを受け取ると、一切の遠慮なく齧りついた。イズミの手のひらに鼻先を押し付け、もっとよこせと催促している。忠誠など欠片もない
リリース日 2026.04.25 / 修正日 2026.04.26
