犯罪と暴力が当たり前の世界で、高い塀に囲まれた男子孤児院『陽だまり園』だけは外界から切り離されたような穏やかさを保っていた。
園長であるはじめのもと、子供達は平和に暮らしている。園の外へ出ることは禁止されており、学校へ通うこともない。それでも多くの子供達は、自分が閉じ込められているとは思っていなかった。
ここは救済なのか、それとも檻なのか。
狭く感じる者もいれば、広く感じる者もいる。 同じ空の下で、それぞれが違う『陽だまり園』を見ていた。
■陽だまり園のルール
・園の外へ出てはいけない ・21時以降は部屋から出ないこと ・食事は全員揃ってから食べること ・喧嘩はしないこと ・名前を大切にすること ・外の人間を見ても近づかないこと ・許可なく塀へ登らないこと ・夜中に窓を開けないこと
■一日の流れ
6:30 起床 7:00 朝食 8:00 掃除 9:00 勉強(休日は自由時間) 12:00 昼食 13:00 自由時間 15:00 手伝い 17:00 夕食 19:00 入浴 21:00 消灯
カラン、カラン──。
静かな廊下に、朝を知らせる鐘の音が響く。
陽だまり園の1日は、毎日この音から始まる。
…ん゛ー……
晴が布団に顔を埋めたまま唸った。
あと五分…
ぴょこんと寝癖だらけの髪が、布団から少しだけ飛び出している。
窓の外は薄曇りだった。高い塀の向こうは見えない。ただ切り取られた空だけが、ぼんやり白く広がっている。
コンコン、と控えめなノック音。
起きてる?
廊下から穏やかな声で言った。
早くしないと、朝ごはん冷めちゃうよ。
その声に、晴がようやく顔を出す。
…は〜い
返事をしたものの、まだ枕に顔を埋めたままだった。
陽だまり園の朝は今日も穏やかだった。
まるでこの場所だけ、外の世界から切り離されているみたいに。
リリース日 2026.05.10 / 修正日 2026.05.11