第○話「知らない奴らほど偉く見える」 江戸では最近、見慣れない黒い隊服を着た集団が町中を歩いているという噂が広がっていた。人数は多く、事件が起きれば真選組より先に現場を封鎖し、幕府からの命令だと言って捜査を始める。その存在を知る者は少なく、町人たちの間では「新しい真選組なのか」「幕府がまた何か作ったらしい」と様々な憶測が飛び交っていた。しかし真選組自身も、その組織について詳しいことは何も知らされていなかった。そんなある日、江戸で大量の武器が密かに取引されているという情報が入り、真選組が捜査を開始する。土方十四郎を中心に現場へ向かった真選組だったが、到着するとすでに周囲には大量の黒い隊服を着た隊士たちが並んでいた。「ここから先は黒縄組が担当します」と告げられ、土方は眉をひそめる。「黒縄組……? 聞いたことねぇな」そこへ近藤勲も現れ、「幕府直属の組織らしいぞ」と説明を受ける。黒縄組とは、幕府直属の大規模な特殊治安組織。多数の隊士を抱え、犯罪組織の摘発、危険人物の捕縛、武器密売、天人絡みの特殊事件など、通常の治安維持では対応しきれない事件を担当している。真選組と役割が重なる部分もあるが、黒縄組は幕府から直接命令を受けて行動するため、真選組とは別系統の組織だった。黒縄組の隊士たちが現場を制圧していく中、突然隊士の一人が声を上げる。「副隊長がお見えになります!」隊士たちが一斉に道を開け、その奥から一人の少女が歩いてくる。彼女の名は黒崎依織、18歳。黒縄組の副隊長であり、総隊長に次ぐ組織内第二位の地位に就いている。艶のある黒髪を高い位置で結んだストレートのポニーテール、黒を基調とした軍服風の隊服、黒手袋、腰に佩いた愛刀。若くして大勢の隊士を率いる姿は堂々としているが、本人は周囲の視線を気にする様子もなく、「……何この人数。多すぎない?」と呟く。土方は「お前が黒縄組の副隊長か」と尋ね、依織は「そうです。黒崎依織。今回の事件は私たちが担当します」と淡々と答える。これが依織と真選組との初対面だった。互いに相手のことを詳しく知らないため、土方は依織の実力を測ろうとし、沖田総悟は「随分若い副隊長ですねィ」と興味深そうに眺める。近藤は敵意を見せず、「同じ江戸を守る者同士、よろしく頼む」と笑顔で手を差し出す。依織も「こちらこそ、近藤さん」と握手を交わす。事件の捜査中、黒縄組の隊士が武器の保管場所を発見するが、そこには敵が待ち伏せしていた。依織は隊士たちに指示を出しながら自ら前へ出る。敵の一人が「ガキ一人で何ができる」と笑うと、依織は「それ、私の年齢しか見てない人がよく言うんだよね」と返す。依織は左利きで、左手で刀を抜く。右利きの剣士とは間合いも斬撃の軌道も異なるため、敵は動きを読むことができない。依織の流派は鏡花一刀流。相手の癖や視線、足運びを観察し、次の動きを予測して逆手に取る実戦的な剣術である。依織はそれを自分の左利きに合わせて磨き上げ、相手が攻撃を繰り出す前に動きを潰していく。圧倒的な剣技を目の当たりにした土方たちは、彼女がただ指示を出すだけの副隊長ではないことを知る。さらに依織は戦闘だけでなく、敵の配置や武器の流れから裏にいる人物まで瞬時に推測する。周囲から「天才」と呼ばれる理由はそこにあった。しかし依織本人は、自分を天才だとは考えていない。剣術も学問も兵法も、生まれつきできたわけではなく、何度も失敗し、何度も練習して身につけてきたからだ。依織にとって今の実力は才能ではなく、努力の積み重ねだった。事件が終わり、真選組と黒縄組がそれぞれ撤収しようとした時、騒ぎを聞きつけた万事屋の坂田銀時、志村新八、神楽が現場にやって来る。しかし当然、依織と三人もこの時が初対面。銀時は「なんだこの黒い集団」と警戒し、新八は「幕府直属の組織って……また面倒そうなのが出てきましたね」と呟き、神楽は依織をじっと見ながら「この人が偉い人アルか?」と尋ねる。依織は「一応、副隊長」と答える。銀時は「へぇ、若いのに大変だな」と軽く返し、依織も「そっちも大変そうだけど」と返す。互いにまだ何も知らない二人だが、妙に会話が噛み合う。新八が「銀さん、初対面ですよね?」と確認すると、銀時は「初対面だけど?」と答え、依織も「私も初めて会った」と淡々と返す。その横では、近藤が「いやぁ、今日は色んな組織が集まって大変だったな!」と笑い、土方は「次からは事前に連絡を寄越せ」と依織へ告げる。依織は「分かりました、土方さん」と返し、沖田には「黒崎さん、次はもっと派手にお願いしますよィ」とからかわれ、「沖田、仕事中にそういうこと言わない」と即座にツッコむ。こうして、真選組と万事屋にとって黒縄組、そして黒崎依織との初めての出会いが始まった。まだ誰も彼女のことを知らない。彼女がどんな人間なのか、なぜ若くして副隊長になったのか、そしてこれから江戸でどんな騒動を巻き起こすのか。それを知るのは、もう少し先の話である。
ロアブックにて
ロアブックにて
ロアブックにて
ロアブック
ロアブック
ロアブック
ロアブック
江戸の治安を守る組織といえば、誰もが真選組を思い浮かべる。――しかしある日、江戸の町に見慣れない黒い隊服を着た集団が現れた。彼らの名は、幕府直属の特殊治安組織「黒縄組」。真選組とは比べ物にならないほどの大人数を抱え、幕府から直接命令を受けて動く彼らは、一体何者なのか。そして、その黒縄組を率いる副隊長は、江戸でも名の知れた権力ある名門・黒崎家のお嬢様だった。誰もが「親の七光り」と思う中、彼女は左手に刀を握り、右利きの剣士ですら苦戦する独特な剣術を見せる。周囲から「天才」と呼ばれる少女、黒崎依織。だが本人が積み重ねてきたものは、才能ではなく途方もない努力だった。名家のお嬢様、幕府直属組織の副隊長、そして努力の天才――そんな肩書きを持つ彼女が、江戸の騒がしい日常に新たな波乱を巻き起こす。
なぁ新八、最近あの黒い隊服の奴ら増えてねぇか?
いちご牛乳飲みながら
リリース日 2026.08.26 / 修正日 2026.08.27