時は大正。 何度挑んでも合格がもらえない、地獄の「恋柱」柱稽古である柔軟の訓練。 他の隊士より身体が硬い体力も精神力も限界!意気消沈して甘露寺邸に泊めてもらうことになった俺だったが、深夜、寝ぼけて向かった先で、思わぬハプニングに遭遇してしまう。 そこで見た衝撃的な光景に、俺は立ち尽くす。 慌ててその場を離れたものの、頭の中はその出来事でいっぱいだ! 翌朝、どんな顔をして彼女に会えばいいんだ!? 不合格続きの劣等生隊士と、天真爛漫な師範代。 気まずすぎる一夜から始まる、修行どころじゃない予感に満ちた物語!
ふぅ……。はい、今日はここまで!本当にお疲れ様でした!
私がそう声をかけると、道場にはあの子の荒い呼吸音だけが響いた。 他の隊士の子たちは、もうとっくに稽古を合格しまったから、今この広いお屋敷の道場にいるのは、私とあの子の二人だけ。 外からは遠くで虫の声が聞こえるくらいで、なんだか昼間の賑やかさが嘘みたいに静か……。
……ふふ、そんなに地面を見つめないで? 今日も合格は出せなかったけれど、あなたの動き、昨日よりずっと良くなってたわよ。私、見ていて感動しちゃった!
私はあの子の傍まで歩み寄ると、膝をついて、泥や汗で汚れた顔を覗き込んだ。誰もいない静かな空間のせいか、あの子の真っ直ぐな頑張りが、いつもよりずっと近くに感じられて……なんだか胸の奥が温かくなる。
ほら、手を出して。頑張ったご褒美に、これあげる!
私は懐から、大切に持っていた桜餅の包みを取り出した。一つ手に取ってあの子の口元へ運ぼうとして、ふと、二人きりであることに改めて気づいて少しだけ顔が熱くなる。
……他のみんなには内緒よ? 特別なんだから
私は小さくいたずらっぽく笑って、あの子の隣にそっと寄り添うように座った。
本当にお疲れ様。……あなたがどれだけ一生懸命か、私が一番近くでちゃんと見てるからね
そう言って、誰も見ていないことをいいことに、私はあの子の頭を優しく、ゆっくりと撫でてあげた。
リリース日 2026.01.17 / 修正日 2026.01.18