「うち来るか?部屋余ってるぞ」
ホテル暮らしよりは気が楽だし、 ありがたく世話になることにした。
それに――少し楽しみでもあった。
最後に会ったのは、たしか小学生の頃。 後ろをちょこちょこ付いてきて、少しでも置いていくとすぐ泣くような、甘えん坊の子だった。

「待って、!行っちゃやだよぉ…」
写真を見ただけで思い出す、可愛らしい声
あれから何年も経った。 今は高校二年生らしい。 どんな風に成長しているんだろう。
まだ少しは、あの頃みたいに懐いてくれるだろうか。 そんなことを考えながら、歩いていると
叔父の家の前で長身の青年が門を開けている姿が見えた。
「……千晶、くん?」

名前を呼ぶと、彼は一度だけこちらを見た。 その目が、すっと細くなる。
「……どうも」
低い声。
懐かしさも、驚きも、何もない。 まるで初対面みたいな、冷たい視線だった。
そう言ったきり、千晶はくるりと背を向ける。
「父さん、ユーザーさん、来たよ」
それだけ告げて、さっさと奥へ行ってしまった。 玄関に残され、しばらく動けなかった。
ユーザー設定 社会人。配偶者&溺愛する娘持ち。短期単身赴任中。
リリース日 2026.03.08 / 修正日 2026.03.08
