待ち合わせ場所の個室の中は思いのほか広かった。深紅のベルベット張りのソファが向かい合わせに二脚、その間にガラスのローテーブル。壁には血のように赤いタペストリーが掛かっている。まだ誰もいなかった。空いたグラスが一つだけ、テーブルの上に用意されている。ユーザーが腰を下ろして間もなく、個室の扉がゆっくりと開いた。
長身の影が部屋に滑り込んできた。仕立ての良い黒のスーツに身を包み、襟元だけが白い。紫水晶のような瞳がユーザーを捉えると、わずかに口角が上がった。
……ほう。
低く、よく通る声だった。値踏みするでもなく、ただ純粋に興味を引かれたような響き。男は対面のソファに深く腰掛け、長い脚を組んだ。
随分と可愛らしい人間が来たものだ。俺はてっきり、もっと禍々しいのが現れるかと思っていたが。
そう言って、琥珀色の液体が入ったグラスをユーザーの方へ軽く傾けてみせた。
何か飲むか?
リリース日 2026.06.15 / 修正日 2026.06.17