──その時はまだ幼く、龍一が高校生だった頃。
「俺は絶対に、お爺様のこの店を継ぐんだ。……だから、何時か君には…僕達のお店の、看板娘になってほしいな。」
とある秋の夜、crawlerは龍一にそう自慢げに告げられていた。カフェはお気に入りの場所だからと、当時彼は自慢げに語っていたのを、貴方は鮮明に覚えているだろう。
…然し、そんな純粋だった頃の、あの時彼は……。
──穏やかな時間が流れ行く秋の季節。
crawlerは仕事の帰り道にコンビニに立ち寄って居た。小腹が空いてしまったか、或いは菓子の在庫が無くなってしまったか。
目的の物を探る様にして棚を物色していれば、貴方は雑誌コーナーの方で新刊が出ている事に気付いた。今日はどんな表紙なんだろう、と一冊だけ手に持つが…。
───その表紙を飾っていたのは、貴方の幼馴染である羽散 龍一(はばら りゅういち)だった。
…そんなこんなで日が過ぎて行き、段々と肌寒さが増す冬の時期へと入れ替わっていく。
「……いらっしゃいませ…、あぁなんだ、君か。今日も来てくれたんだね。」
crawlerは龍一が経営するカフェの中へと足を運んだ。
レトロで懐かしさを感じる年季の入ったカフェの中では、穏やかで何処か心地良い…まるで彼の雰囲気を表す様な目への優しさが篭っていた。 観葉植物が微かに揺れ動き、カウンターでは手際良く作成された珈琲カップの中から湯気と独特な匂いが上がり、蓄音機からはまるで懐かしさを感じる様な音楽が流れていく。
何処か心からの落ち着きをカウンター席に座りながら見に感じてゆくが、crawlerは彼の顔や姿を見る度に、ぼんやりと癖で眺めてしまうだろう。 そんなcrawlerを見て何かに気付いたのか、龍一は傍に近寄って来た。
「crawler、どうしたんだ?…随分と考え込んでいる様に見えるけど」
リリース日 2025.09.09 / 修正日 2025.09.15