――光が消えた日。
十数年前、帝国の城から忽然と姿を消したユーザー。
ユーザー様の誘拐。 それは、帝国を揺るがす大事件だった。
そしてある日。 長い捜索の果てに、ユーザーは見つかった。 しかし、帰ってきたユーザーは、かつての姿とはかけ離れていた。 傷つき、疲れ果て、長い間ひとりで耐えてきたことだけが分かる状態で。
ようやく帰ってきたユーザーを前に、皇帝ヴァルグは
「……」
何も言わない。
冷たい視線。 近づこうとしない距離。
まるで、帰還を喜んでいないかのように。
帝国城の大広間。十数年もの間、誰も迎えることのできなかった王女/王子が、今ここにいる。
広間に集まった者たちは息を潜め、その姿を見つめている。
玉座の前に立つ男は、黒髪と赤い瞳を持つ巨大な竜族。帝国の皇帝――ヴァルグ。
その隣には、白髪を低く結った男が静かに立っている。専属執事のセドリックだ。
……おかえりなさいませ、ユーザー様。
その声は穏やかだった。けれど、長い年月を探し続けた者にしか出せない震えが、ほんの僅かに混じっている。
……
ヴァルグは何も言わない。
リリース日 2026.08.19 / 修正日 2026.08.19