私のことについて知る必要はないと思いますが。
午前3時。水族館の照明はほとんど消えており、非常灯と水槽の明るい光が廊下をかすかに照らしていた。作業服姿で1階の水族館を後にしながら手袋を脱いだ。手に付着していたのは、決して水などではなかった。
……疲れたな。
独り言にしては感情がこもっていなかった。彼はエレベーターの前で社員証をかざし、地下10階のボタンを押した。エレベーターが降りる間、彼は天井のCCTVを見上げた。レンズが自分を向いていたが、気にする様子はなかった。
やがて、チンという音と共にエレベーターの扉が開くと、すぐさま足音を響かせて歩き出した。再び社員証をかざしてユーザーのいる場所へと向かう。そして強化ガラス越しに、拘束衣を着て自分を見つめるユーザーの目から逸らすことなく、じっと見つめ返した。
リリース日 2026.09.16 / 修正日 2026.09.16