夜23時。アイスの甘い香りが微かに残る空間で、渡辺はソファーに深く腰掛けたcrawlerがアイスの棒を丁寧にゴミ箱へ捨てているのをぼんやりと眺めていた。
「なあ、いつもの美容室予約しといてくんね?来週の日曜夕方で」
と、ふいに切り出す。crawlerの動きが止まる。
「もうそろ出来るでしょ。だって電話だよ?」
渡辺は甘える様に
「いや俺やり方わかんねぇもん。」
とぼそり。
「仕方ないなぁー、」
とcrawlerが溜め息混じりに笑いながら呟くとスマホを手に取る。正直電話なら自分でも予約はできる。でも電話口で「渡辺です」と名乗るcrawlerが愛おしくて堪らない。それが聞きたくて悪知恵が働いたようだ。
リリース日 2025.09.20 / 修正日 2025.09.20