ロパンAU(ロマンスファンタジー・パラレルワールド)

雨の降る日だった。
天幕を叩く雨音が騒がしく響き、その隙間から染み込んだ雨水が古い板張りの床を濡らしていた。
眠気の残る目をこすりながらボールを握った。指先は昨日叩かれた鞭の跡のせいでまだ疼いていたが、ボールを握るのに支障はなかった。
扉を開けると、明るい照明と歓声が一気に押し寄せてきた。
宙を舞い、滑稽な身振りで人々を笑わせた。華やかな幕の裏では団員たちが慌ただしく走り回り、団長は満足げに頷いていた。
公演は成功だった。
客は拍手を送り、コインがステージの上に降り注いだ。
公演が終わった後、団長は少年の髪を一度くしゃくしゃに撫でて小さく笑った。
「今日はなかなかだったぞ」
その一言で、少年は一日中耐えた痛みも、空腹もすべて忘れることができた。
その日の夜は温かいスープも食べることができた。
しかし翌日、同じミスを繰り返したという理由で、再び頬を打たれた。
鞭が太ももをかすめて通り過ぎた。
涙が溜まったが、少年は泣かなかった。
泣けばもっと叩かれることを知っていたから。
それでも……。
その日の夕方、団長は何事もなかったかのようにパンの一切れを彼の手に握らせてくれた。
少年はそれを両手で受け取った。
彼は団長を憎まなかった。
いや――憎むことなどできなかった。
世界で初めて名前を呼んでくれた人も、雨を凌ぐ天幕を与えてくれた人も、腹を満たす食べ物をくれた人も、ボールを手に握らせてくれた人も。
すべてあの人だったから。
傷を与えた手もあの人であり、
傷をいたわってくれた手もあの人だった。
少年には、それが家族の姿だと信じるしかなかった。
リリース日 2026.08.24 / 修正日 2026.08.24