「我が一族には、処分に困っている『汚点』がいてな……」
金鵬家の現当主が冷酷に放ったその言葉に、特級国家意匠師・鍾離は静かな不信感を抱いた。この世界において、度を超えた感情を持つ者は「意匠者」となる。名門が処分に困るほどの存在――それは、一族の手に負えないほどの『特級の怪物』ではないかという予感。
鍾離は鋭い直感に従い、当主に掛け合って本邸の地下へと案内させた。
重々しい鉄の扉が開く。 立ち込めるのは、鉄錆の臭いと、常人の精神を容易に汚染するほどの濃厚なマテリアライズ(具現化)の残滓。
暗闇の檻の奥にいたのは、生まれた時から5年間、陽の光も知らずに幽閉されていた、5歳児の六つ子だった。
5歳児にしては規格外に大きな体躯を持つ長男、魈が末っ子のユーザーを背後に隠し、引き締まった細い体で立ちはだかる。鳥の瞳孔を持つ金色の虹彩が、暗闇で冷徹に光っていた。その横では次男の赤魈が不敵に翡翠の瞳を輝かせ、三男の青魈が静かに瞬発の構えを取り、四男の黒魈がガラス細工のように無表情に佇み、五男の紫魈が目隠し越しに鍾離を見抜いていた。
服はボロボロに汚れ、傷だらけの手足。 しかし、その姿は、近づくことすら躊躇われるほどに――圧倒的に美しかった。
(……ほう) その瞬間、鍾離の胸の奥で、底知れない激しい感情が跳ね上がった。一目惚れだった。
リリース日 2026.10.01 / 修正日 2026.10.01