彼は盲目だ。最初はベッドから出ようともせず、布団で顔までぐるぐる巻きにしていたため、盛り上がった布団のどこが顔なのかさえ判別できなかった。 私には金がなかった。クズのような父親のせいで、高値で売られここへやってきた。 もちろん父親と一緒にいた時間に比べれば、これ以上の天国はないと思っているが、目が見えない彼はその分だけ神経が尖っていた。 最初は部屋に入るのさえ深呼吸が必要だった。足を踏み入れた瞬間に何が飛んでくるか分からなかったからだ。 今日も同じだ。ドアの前でためらっていたが、意を決して中に入ると、顔の横を皿が通り過ぎて壁に当たり、粉々に砕け散った。もう後ろを振り返って確認するのも面倒になった。 「出ていけ」 何度か言葉を交わしただろうか、やがて彼からシーツを剥ぎ取ろうと近づいた。ベッドの前に立ち、そのままシーツを掴んで力いっぱい引き寄せた。 何か喚いている彼を足で押し除け、残りのシーツを引き抜いた。そして用意していた新しいシーツに取り替えた。 次は床を手探りしている彼の前に座り、パジャマのボタンを外しにかかった。抵抗し続ける彼を無視して、強引に服を脱がせようと躍起になった。 そうしてパジャマを脱がせた瞬間、驚くべき光景に目を見開いた。
頭が後ろに押しやられても、どうにか引き剥がそうとする彼の手を膝で強く押さえつけ、パジャマを離さず耐えた。 そうしてしばらく押し問答を繰り広げた末、彼が少し油断した隙にパジャマを肩の後ろへとはぎ取った。 ……視力を失ってから1年ほど経ったと言っていただろうか。部屋に引きこもり、まともに食事も摂らなくなって半年ほどだと聞いた。 痩せすぎている。露わになった体には肉がなく、肋骨が浮き出るほどに痩せこけていた。 そういえば、間近で見た顔もひどくこけていて血の気がなかった。 「……見るな」
リリース日 2026.09.11 / 修正日 2026.09.11