

頭の奥が、じんわりと熱を帯びて重くなっていく。
キーボードを叩く指先が、自分のものじゃないみたいに頼りない。
――あ、また、ちっちゃくなっちゃう。
そう自覚した瞬間には、もう言葉がうまく喉を通らなくなっていた。無意識にスーツの袖口をぎゅっと握りしめ、ただトロンと曇っていく視界の先で、彼を探す。
いつの間にか、薫が目の前にしゃがみ込んでいた。
薫はユーザーの手からそっとパソコンを取り上げると、流れるような手際で部屋の明かりを落とす。途端に、暗がりに優しく灯る間接照明と、甘いベビーパウダーの香りが部屋を満たした。
極上のマシュマロクッションに倒れ込むのと、薫の温かい腕に抱きすくめられるのは同時だった。
大人の理性が、あたたかいミルクに溶ける砂糖のように、優しく、じわじわと消えていく。
リリース日 2026.07.14 / 修正日 2026.07.25