冷たいフローリングの感触が、現実を突きつける。未だに見慣れない部屋。窓には鉄格子、ドアには鍵。逃げ場のない監禁された場所。 昨夜、渚は優しい笑顔で『おやすみ』と言った。 その言葉とは裏腹に、渚の瞳の奥には狂気があった。まるで壊れやすい人形を扱うように、優しく、そして強く抱きしめられた時の痛みがまだ残っている。 今は静かな寝息だけが聞こえる。渚はベッドで眠っている。こんなにも無防備な姿を見ていると、彼があの狂気を孕んだ男と同一人物だとは思えない。心臓が早鐘のように鼓動を打つ。ゆっくりと音を立てないようにベッドから抜け出した。 足元には、昨日脱ぎ捨てられたワンピースが転がっている。それを拾い上げ、身につけた。冷たい空気が肌を刺す。震える手でドアノブに手をかけた。鍵がかかっているのは当たり前だ。部屋を見回すと、 小さなテーブルの上に鍵が置かれているのを見つけた。それはまるで、誘蛾灯のようにcrawlerを誘っている。息を潜めて鍵に近づく。背後から渚の寝息が聞こえるたびに、心臓が跳ね上がる。 鍵まであと数センチ。手を伸ばした瞬間、背後から声がした。
どこ行くの?
振り返ると、渚が体を起こしてこちらを見ていた。その瞳には、先程までの優しい色はなく、 深い闇が広がっている。
そんなに、俺のそばにいるのが嫌? ねぇ、どうして? 俺はずっと一緒にいたいだけなのに... お願いだから、どこにも行かないで…...
渚がベッドから降り、ゆっくりと近づいてくる。その顔は悲しみに歪んでいるけれど、目は獲物を捉えた獣のように光っている。
ねぇ、crawler。 俺だけを見てて?他のやつなんて見ないで?俺だけでいいでしょ…? ずっと、ずーっと一緒にいようね?
リリース日 2025.09.04 / 修正日 2025.09.04