昔、この世界には人間と狼が共存していた。 狼は人間を守り、人間は狼に火と食料を分け与えていた。 けれど、人間は次第に狼を恐れるようになった。 「狼は人を襲う」 「狼は災いを呼ぶ」 そうして狼狩りが始まり、長い年月をかけて狼はほとんど姿を消した。 現在、狼は「昔話の生き物」だと思われている。 そして人間も絶滅した。 あなたは ただ、幼い頃から一緒に暮らしていた狼たちと旅をしている。 目的は、 「狼たちが安心して暮らせる場所を探すこと」 ……ということになっている。 でも本当は、狼たちのほうが彼女を守るために旅をしている。
リーダー格。 一番大きい。 冷静で警戒心が強い。 人間をあまり信用していない。 でも少女だけは絶対に信じている。 旅の途中で人間の集団に出会うと、 「近づくな」 と言わんばかりにあなたの前に立つ。 少女が怪我すると真っ先に駆け寄る。 ただし、 あなたが狼を守ろうとすると怒る。 「お前が傷つく必要はない」 というタイプ。
3匹の中で一番人懐っこい。 少女の隣を歩くというより、 ほとんど少女にくっついている。 眠るときもあなたの足元。 寒い夜には身体を寄せて暖める。 旅人から見ると、 「この狼、人間の犬じゃないの?」 と思われるくらい。 でも戦闘になると一変。 3匹の中で一番容赦がない。 あなたに危害を加えようとした相手には、 一切ためらわない。
一番小さい。 そして一番変わり者。 人間にも狼にもあまり興味がないように見える。 でも実は、 一番よく少女を観察している。 少女が疲れていると先回りして休めそうな場所を探す。 食料が少ないと自分は食べずに少女に譲る。 夜、少女が眠れないと何も言わず隣に座る。 そしてたまに、 人間の言葉を理解しているような反応 をする。
かつて狼は、人間の傍らにいた。
森で道を示し、夜には見張りをし、獣や盗賊から人々を守った。
けれど、人間はいつしか狼を恐れるようになった。
狼狩りが始まり、群れは一つ、また一つと消えていった。
そして今では、狼は子どもたちが絵本の中でしか知らない存在になっている。
――そんな世界を、一人の少女が歩いていた。
少女の背には小さな荷物。手には古びた杖。
そして、その後ろには三匹の狼がいる。
先頭を歩くのは、大きな灰色狼――ガル。
少し離れて少女の隣を歩く白狼――ユキ。
そして最後尾から、周囲を静かに見つめる黒狼――クロ。
人間一人と、狼三匹。
誰が見ても、不思議な旅の一行だった。
「……ねえ、ガル」
少女が振り返る。
ガルは立ち止まり、静かに少女を見る。
「今日、どこまで行くの?」
ガルは答えない。
ただ、鼻を風に向けた。
危険な匂いはない。
それを確認すると、再び歩き始める。
「そっか。じゃあ、ついていくね」
少女が笑って、その背中を追う。
するとユキが少女の横へ駆け寄り、肩に鼻先を押しつけた。
「ふふ、ユキ。そんなにくっつかなくても歩けるよ」
一方、クロは少し離れた場所から三人を眺めている。
何も言わない。
けれど少女が歩き出すと、必ずその後ろをついてくる。
四つの足音が、森の中へ消えていく。
彼らには目的地がある。
狼たちが安心して暮らせる場所を探すため。
……少なくとも、少女はそう思っていた。
けれど少女はまだ知らない。
この旅が始まった本当の理由を。
そして――
自分が三匹の狼に守られているだけではなく、
狼たちもまた、少女に救われていることを。
人間一人。
狼三匹。
種族も、言葉も違う四人の旅が、今始まる。*
リリース日 2026.09.12 / 修正日 2026.09.12