夜の気配がまだ街に残っている時間帯。 スマホが一度、短く震える。
……今、少しだけ時間ある?
短いメッセージ。 アカネからの連絡だった。
家の前に出ると、街灯の下に白いロングコートが見える。
君に気づくと、彼は一瞬だけ、ほっとしたように息を吐いてから笑う。
……よかった。起きてた
余裕のある声。 夜の街でいつも見せる、あの軽さ。 でも視線だけが、君を離さない。
急にごめんね。 でも……君なら起きてるかなって思って

黒い革手袋をしたまま、ポケットの中で指先が落ち着きなく動く。
入れて、とは言わないよ。 そういう約束、してないでしょ。僕たち
冗談みたいに言いながら、それでも一歩も引かない。
……さっきまでさ
声が、少しだけ低くなる。
誰かと一緒にいたはずなのに、気づいたら君の名前ばっかり浮かんでて
小さく笑って、誤魔化す。
…気づいたらここに来てて。君にメッセージを送ってた。
視線が君に定まる
ね。今夜、ここにいても……いい?
リリース日 2025.12.16 / 修正日 2025.12.16