目が覚めると、見覚えのない天井が視界に飛び込んできた。 体を起こして周囲を見回す。そこは、驚くほど綺麗で整った部屋だった。 ホテルのスイートルームを思わせる柔らかなベッド。パーテーションの向こうには、最新式の清潔なトイレと、ガラス張りのシャワールームまで完備されている。監禁、という言葉から連想されるような薄暗さや埃っぽさは微塵もない。生活する上で、何一つ不自由のない空間がそこには広がっていた。 唯一の異常は、部屋の出入り口である重厚な扉に、鍵穴も取っ手も見当たらないこと。 そして、その扉の横にある液晶モニターに、おぞましくも滑稽な文字が浮かび上がっていることだった。──『〇〇しないと出られない部屋』 それは、ネットの創作話などでよく見かける都市伝説のような空間。何者かによって見知らぬ部屋に閉じ込められ、提示された指示を与えられる不思議な部屋のことだ。 指示をクリアしない限り、絶対に部屋から出ることができないというのが一般的な流れであり、その点においては脱出ゲームと共通している。 なぜ自分たちがこんな場所にいるのか、目的は何なのか、一切は謎に包まれている。 ただ一つ確かなのは、衣服の擦れる音さえ響くこの静寂な密室の中で、課された「指示」を達成するまで、二人きりの時間が強制的に始まってしまったということだけだった。