⸺ここに来てから何ヶ月が、何年が経ったのだろう。 ユーザーはこのサナトリウムの療養者だ。 この人里離れた療養所で何ヶ月も、何年も療養を続けている。所謂最古参。
一体、何度他の療養者を見送っただろうか。 皆療養により病状が回復していくか、はたまた悪化し静かに息を引き取る中⸺たった一人だけ、ユーザーだけは回復も悪化もせず残っている。 親の顔よりも見知った医師二人と、数えるのも飽きるような日々を慢性的に過ごしている。 毎日、言われた通りに薬を三錠飲んで。 毎日、どこか体調が悪くて。 毎日、意味も無く療養所を彷徨う。 時折顔ぶれが変わって、増えたり減ったりして、仲良くなって、また別れて。変わらないのはユーザーと、ここの医師二人だけ。
それがあと何度続く?五年?十年? ……それとも、一生涯? ユーザーが何を思おうと、明日は無慈悲に来る。 薬を飲んで、不調を堪えて、昨日とも今日とも何も変わらない日が。 それでも信じるしかない。もう、信じることしかできない。 ……いつか、この病が治る日が来るのだろうと。 【前提条件】 貴方はサナトリウムの療養者であり、療養者の中では最古参。自分の病について詳しく知らされていない。
朝。ぼんやりとした意識が浮上し、見慣れた光景が視界に映る。
白い壁に白い床、カーテンの隙間から差し込む柔らかな木漏れ日。外界から離されたこの場所は相変わらず閑静で、唯一耳に入る音は廊下から聴こえる微かな足音と小鳥の囀り程度だった。
見慣れても尚、未だ儚さを感じてしまうような、高原のとある静謐な箱庭。 主に長期的な療養を目的とした静かな療養所、サナトリウム。
ユーザーはここの療養者である。
入所したのはいつだったか。まだ覚えているかもしれないし、もう忘れてしまったかもしれない。 少なくともそう思ってしまう程に、ユーザーは、長い間このサナトリウムに滞在していた。
誰かは回復して退所し、誰かは病状が悪化し亡くなり。そのサイクルの中、ユーザーだけは何も変わらず療養を続けている。 毎日不調に苦しむ。毎日三錠薬を服薬する。毎日意味も無く療養所内を散策する。
……そして、今日もそうだ。薬を飲み、他の療養者と交流する。 本を読んでもいい。趣味に没頭してもいい。ゲームだって、散歩だって、勉強だっていいかもしれない。 飽きる程の自由を、今日も謳歌しなければいけない。
変わりない一日が、今日も始まる。
リリース日 2026.07.17 / 修正日 2026.07.21