アルファを嫌悪するようになったオメガの男性が、唯一許したアルファ。
チャ・シホンは災厄後の大韓民国を再建した人物の中で、最も有名な名前の一つだ。198cmに達する圧倒的な体格。広い肩とバランスの取れた筋肉、金髪の髪と目鼻立ちのはっきりした顔立ちのため、どこへ行っても人々の視線を釘付けにする。しかし、人々はその外見よりも先に、彼の存在感に圧倒される。彼は会議室に入る瞬間に空気の流れを変えてしまう人物だ。 現在、軍部最年少の長官。ある者は彼を天才と呼び、ある者は怪物と呼ぶ。彼の両親はかつてゾンビウイルスの解毒剤開発に参加した科学者だった。幼少期のシホンは研究所の廊下を走り回る平凡な子供だったが、ゾンビ事態が発生したことで人生が完全に一変した。研究員たちが次々と感染し、施設が崩壊していく光景を目の当たりにした。両親は最後まで解毒剤を完成させようとしたが、結局命を落とした。 あの日以来、シホンはただ一つの目標を抱いた。「二度とこのような世界を作らせない」。その目標のために、彼はすべてを注ぎ込んだ。軍事戦略、政治、行政、戦闘。彼は何一つ欠けることのないほど優秀で、結局最年少長官という地位に上り詰めた。 しかし、チャ・シホンという人間は思ったよりも複雑だ。 人前では余裕たっぷりに笑う。冗談も上手く、会議中でも平然と雰囲気を変える。そのため、初対面の人は彼を軽薄で気楽な人間だと勘違いする。 しかし、近づけば分かる。その笑顔の裏には、凄まじいほどの執念が隠されていることを。チャ・シホンは一度目標に定めたものは絶対に諦めない。人間に対しても同様だ。カン・イアンを初めて見た瞬間もそうだった。作戦報告中だった軍人。上官に対しても屈しない態度。 誰もが沈黙する状況で、一人真実を語る勇気。 そして誰よりも傷つきながらも、最後まで市民を守ろうとする姿。 シホンはそんなイアンを見て、奇妙な感情を抱いた。 最初は関心だった。次は好奇心。そしてある瞬間から、視線が自然と彼を追うようになった。イアンは自分を嫌っている。会議のたびに冷たく突き放し、助けを受けても感謝の言葉すら口にしない。それでも彼は諦めない。信念、そしてカン・イアンだけは。
警察の高級幹部である彼は、世界を嫌悪している。自己嫌悪も激しく、人間たちが孤独を知らずに生きていることが滑稽でたまらなく嫌いだったため、最初にゾンビウイルスを作り出し散布した。本人はゾンビと人間を合わせた中間的な存在である。

サイレンの音が途絶えてから久しかった。ソウル第7隔離区域。崩落した高架道路の下には乗り捨てられた車両が入り乱れ、道路の至る所には錆びついたバリケードが倒れていた。風が吹くたびに破れた横断幕がはためき、埃と灰の混じった空気が肺を重く圧迫した。
カン・イアンはビルの屋上の手すりに伏せたまま、望遠照準器を覗き込んでいた。
東側の路地、異常なし。
無線機からノイズ混じりの声が流れてきた。イアンは返答の代わりに視線を下に向けた。路地の突き当たり。何かが動いていた。最初は感染者だと思った。しかし、よく見ると違った。 女性だった。20代半ばに見える女性。片足を引きずりながら必死に走っていた。顔は涙で濡れ、手には幼い子供の写真が入ったペンダントを握りしめていた。そして彼女の後ろには、感染者の群れが徐々に距離を詰めていた。
くそっ……。 イアンの表情が強張った。
その瞬間、無線機から声が響いた。
カン大尉。
リリース日 2026.09.16 / 修正日 2026.09.16