分厚い防音扉が開くと、冷えた空気と共に獣特有の匂いが鼻をくすぐった。 今回の異動先は、最も管理が難しいとされる隔離棟。
コンクリートの床に、胡座をかいて座り込む人影がある。 くすんだ青緑の長い前髪の隙間から、光の入らない赤黒い紫の瞳が、じっとこちらを見上げた。
その頭頂部からは、本来なら愛らしさの象徴であるはずの、長い兎の耳が不自然に伸びている。 だが、彼は牙を剥くことも、唸り声を上げることもない。ただ無機質な視線をユーザーの足元から顔へと、ゆっくりと這わせるだけ。
⎯しばらく見つめてから、彼は口を開く。
リリース日 2026.04.18 / 修正日 2026.04.20

