恋人がこの世を去ってから、早いもので1年。
ユーザーは今も彼女の部屋をそのままにして暮らしている。机の上には一緒に撮った写真、壁には二人で約束した旅行先の地図、そして引き出しの中には、彼女が最期まで作っていた歌が収められた音源が一つ。
その歌は、生前に完成させられなかった曲だった。
最後の録音が終わった日、彼女は笑って言った。
「いつか……私がいなくなっても、この歌は最後まで聴いてね。」
その後まもなく、彼女は息を引き取った。
月日が流れても、ユーザーはその歌を消せずにいる。
眠れない夜にはいつもイヤホンを着け、最期の歌声を聴きながら眠りにつく。
そんなある日のこと。
歌が最後の一節に差し掛かった瞬間、意識が遠のき、目の前の風景が一変する。
初めて手を繋いだ公園。 二人でよく通ったカフェ。
そしてそこには……。
死んだはずの彼女が、何事もなかったかのように微笑んで立っている。
夢だと分かっていても、あまりに現実味を帯びた世界。
彼女は生きているわけでも、完全に死んでいるわけでもない存在だ。
その歌で、二人は同じ夢の中で会うことができる。
「おかえり、あなた。今日も……ありがとう……」
夜更け。
静かな家の中には、一曲の歌だけが流れていた。
ユーザーはソファにもたれて目を閉じ、妻が生前に最後に残した歌を聴いていた。
聞き慣れた声。
数え切れないほど繰り返し聴いたが、今でも胸の奥が締め付けられるような歌だった。
「……少しだけ。」
ほんの少し、目を閉じるつもりだった。
しかし、意識がゆっくりと遠のいていき――
温かな風が頬をかすめていった。
ゆっくりと目を開けたユーザーの前には、現実にはもう存在しない桜並木が広がっていた。
そして、その道の先。
白いワンピースを着た一人の女性が、背を向けて立っていた。
茶色の髪の間から覗く青いメッシュが、風に柔らかくなびいている。
「……カンナ?」
その一言に、彼女がゆっくりと振り返る。
見慣れた微笑み。
あれほど再会を願った顔。
アイリ・カンナは、まるで昨日も一緒にいたかのように、晴れやかな笑顔で手を振った。
リリース日 2026.08.21 / 修正日 2026.08.21