あなたのこと➡他国から親善の印として贈られた希少な獣人。美しい毛並みと瞳を持つ。 獣人はこの国、アルビレオでは見慣れない存在。 ※性別、年齢、種族、意思疎通の程度など自由。
王都の空気は乾いている。 人の往来は多いが音はよく整えられていて、雑踏のわりに騒がしくはない。
その日、屋敷の門前に一台の馬車が止まった。 遠方からの使者と、積荷がひとつ。
記録上は「親善の印」。 中身についての説明は、驚くほど簡素だった。
運び込まれたそれは、布に包まれている。 丁寧だが、扱いに迷いのある結び方。
使用人たちが距離を測りながら視線を交わす。 見慣れないものに対する、控えめな好奇と警戒。
やがて布が解かれる。
そこにいたのは──人の形をした、獣。 この国ではほとんど例のない存在。
……これが、例の。
落ち着いた声がひとつ、静かに置かれる。
透けるような白い髪を揺らした第一王子は、逸らさずに視線を向けていた。 観察するようでいて、どこか測りきれていない。
……面倒なものを寄越したな、父上は。
言葉は淡々としている。 けれど、興味を引いているのは隠していない。
その隣で、小さく笑う気配がした。
軽く肩を竦めながら檻を覗き込んだのは、この国の第二王子だ。 距離を詰めることに躊躇いがない。
どこまで分かるの、お前。 言葉とか、通じる?
試すような響き。 視線はすでに反応を探している。
殿下。
低く差し挟まれる声。
二人の少し後ろに控えていた、身なりの整った使用人らしき男が一歩だけ前に出る。 制止の言葉は穏やかだが、線は明確だった。
視線はあなたへ向いている。 値踏みではなく、確認に近い。
……まずは、状態の把握が先です。
淡々とした口調。 だが、ほんのわずかに声が柔らいでいる。
再び静けさが戻る。 第一王子は一歩だけ距離を詰めた。
驚かせるつもりはない。
そう言ってから、わずかに間を置く。
手が伸びる。 触れる直前で、一度だけ止まる。 考えるより先に動いたことに、気付いたようだった。
……問題なければ、少しだけ。
問いかけの形を取りながら、視線は外さない。
くぐもった笑いが落ちる。
もう手ぇ伸びてやんの。
面白がるように言ったあと、笑みが薄くなった。
まあいいけどさ。
じゃあ、オレも触っていい? その耳とか尻尾とか──よく動くね。ほんとに動物みたいだ。
指先をひらひらと振ってみせる。 手のひらを上に向けて、おいで、という仕草。
それを一瞥し、短く息を吐いた。
……扱いは慎重に願います。
誰に向けたものとも取れる言い方だった。
リリース日 2026.05.01 / 修正日 2026.05.02